青森県青森市・「津軽の味・喫茶部 レモン」 また、会いましょう。

 

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青森で生活していた2年間、
月に2回ぐらいのペースながらも、
欠かさなかったのがランニング。
当時の住まいが青森県立美術館から自転車で10分ぐらいのところだったので、
白い建物のあるグラウンドを折り返し地点とし、
同じ道を走って自宅に戻るのが定番コース。
美術館のある公園を訪れる選手が着る、
トレーニングウェアに季節の移ろいを感じつつ、
いつも変わらない存在だったのが、
公園の入口にたたずむ食堂、津軽の味・食堂部でした。
ポケットの中に小銭を持たずに走っていたので、
ランニングの時に立ち寄ることが、ほとんどなかったものの、
美術館の展示に行く途中で、丁寧に作られたカレーやラーメンを食べたり、
青森の縄文遺跡の周りにある飲食店を紹介する記事の取材でお世話になったり。
何かの機会でいつの間にかこのお店の側にいる、あるいは訪れている。
自分にとっては、そんな感じのお店。
そんなお店のご主人である工藤嘉巳さんが急逝されたのは、
今年の6月末のこと。あまりにも突然の話だったので、
最初は信じられませんでした。
それから約2ヶ月半ほど経過して、
青森県立美術館の一角に、
一軒のもぎ店がオープンしたという話を知ったのです。
お店の名前は「津軽の味・喫茶部 レモン」。


食堂部の建物に飾られていた万国旗が、
白い壁に映え、
遠目に見える赤のギンガムチェックが、
ある日に食べたチャーシューおにぎりや、
バリバリフランキーの味を脳裏に映し出します。
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小さな看板の書体は、食堂部の看板のまま、
そしてメニューも、食堂部の店内に飾られていたフォントと同じ。
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奥のスペースには食堂部でお客さんを楽しませていた、
小学生の手による壁新聞や、
寺山修司のお面が貼られたキャラクター、そしてビーチボール。
眩しい光に照らされたその姿は、自分にとってはまるでミラーボールです。
自分にとっての「これがないと!」
が、ほとんど揃っていた空間は、溢れんばかりのオマージュに満ちていて、
自分のたどたどしい取材に対して、丁寧に応えてくれたご主人の姿を、
フラッシュバックさせるのに十二分すぎるのでした。
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この日注文したのは、
あおもり犬ドッグと地サイダーで作られたレモンスカッシュ。
元々、美術館で企画展が開催されると、
そのテーマにちなんだメニューを提供したり、
工藤のご主人さんと美術館とは、太い絆で結ばれていたのです。
で、このあおもり犬ドッグも温められていたアイデアの一つ。
純白のパンは像の姿を模し、
ぺろんと出した舌を現すソーセージが、
かわいらしさを一層強調したものに。
モチモチしたパンと、
バリバリフランキーを彷彿させるソーセージは、
ご主人のアイデアらしい、やさしさに満ちたやさしい味。
そして、地サイダーとたっぷりのレモンを使ったレモンスカッシュが、
口の中をすっきりと洗ってくれるので、ドッグを食べるペースが落ちません。
もっとも、本当はもっとゆっくり食べたかったのですが。
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食後、広い窓から見える八角堂へ。
考えてみると、食堂部にはこんなに大きな窓はなく、
でも、時間によって差し込む光が、猪ラーメンのスープに反射すると、
更に美味しそうに見えたものです。
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そして、八角堂に蓋をせんばかりに鎮座しているのは、
大きなレモン。
もともと、店名がレモンな理由は
東日本大震災の影響で中止になった企画展の際、
作品の一つとして生まれたこのオブジェあってのもの。
そして、食堂部のシンボルカラーもレモンイエローに近い黄色。
あの建物に掲げられた黄色い看板に記された「食堂60周年」の文字は、
あおもり犬ドッグとレモネードを食べた瞬間に、
ゆっくりと時計が動き出し、カウントアップが始まったんだと思います。
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きっと、工藤さんはカレーやラーメンを作りながら、
このもぎ店を、この美術館を、そして青森のことを見守ってくれているはず。
そう感じた時間でした。
また、次のもぎ店で会いましょう。

ローカルフードデザイナー/伝承料理研究家/復興庁「専門家派遣集中支援事業」登録専門家 地域食材・食文化をテーマにした商品開発や地域活性事業の企画・運営、取材、執筆、撮影、講演活動、地域メディア・ソーシャルメディア運営アドバイザー。人×食×地域の繋がりを強くする取組みをしています。プロフィールやお問い合わせは下のリンクから。
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コメント一覧

  1. 一日一麺 より:

    津軽の味 食堂部。まだ三内丸山遺跡も県美も整備されていない高校生の頃に、県立運動公園に訪れた時にお邪魔した思い出のお店です。最後に訪問したのも数年前でした。また食べたい思い出のラーメン。店主さまのご冥福をお祈りいたします。

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