新橋・ボワヴェール 「けっぱれ東北!青森の料理と文化伝承しナイト・弘前市編」

04/12/2011東京,青森,新橋/汐留,東北,和食,よるどき

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自分が青森の食材や食文化に対し、心底惚れるきっかけとなったのは、
約5年前に開催された「津軽伝承料理を食する会」に参加したことでした。
あの日「じゃっぱ汁」や「けの汁」に「あんこうの共和え」、
あるいは「ぜんまいの白和え」等、
津軽のかっちゃが時間をかけて丁寧に作り上げた料理を、
食べてなかったら、今の自分はなかったでしょう。
そんな、自分のターニングポイントとなったイベントが、
再び開催されたのです。
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このお店のシェフである川口さん、
今回のイベントを皮切りに、
ボワヴェールを青森に関する情報発信拠点とするべく、
青森の全40市町村で今も息づく食文化や、
気候風土や職人技によって育まれる食材を、
地域文化と融合してお客さんに楽しんでもらうイベントの展開を始めました。
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そして、この日の主役である弘前市の木村冨美さん。
青森県が認定する「食の文化伝承隊」でもある方です。
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テーブルには所狭しと、
木村かっちゃが作った伝承料理が並んでいて、
まるで「人寄せ時」の食卓のようです。


◆にんじんの白和え
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ふわふわの衣が、甘いにんじんと和えられた一品。
津軽ではその色合いが縁起物とされているので、
お正月料理の定番でもある一品です。
◆ナスのずんだ和え
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津軽地方にもナスの料理は多数存在しており、
ナスの紫蘇巻きが代表的な一品ですが、
このナスのずんだ和えもその一品。
薄皮を剥いて細かく刻んだずんだの甘さと、
ナスの食感との組み合わせ。
じわりと染み出す出汁の旨みが、
箸を止めることを許してくれません。
◆菊の甘酢漬け
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菊の花をゆがいて、甘酢に漬けた一品。
きゅきゅっとした独特の食感が楽しく、
いつの間にか、たくさん食べてしまう料理です。
◆みずの数の子和え
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夏ごろに旬を迎える山菜「みず」。
そのシャキシャキした食感は、油が貴重だったころには、
豚肉と炒められたり、飯寿司の具材となったり。
これも含めて山菜は、雪深い時期の保存食材としても貴重な存在。
冬場であっても、市場などで瓶詰めになって保存されているものを見かけます。
そんなみずと数の子を和えた一品、
海に面してない弘前の農村では、
貴重な海産物を和えることで、
おもてなしの一品として作られていました。
◆干し鱈の煮付け
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津軽の伝承料理の代表的な一品といえば、
この干し鱈の煮付け。
昔、しょいっこと呼ばれる行商のおばちゃんは、
漁師町で加工された干し鱈を持って、
電車に乗って米どころである津軽地方に足を運び、
干し鱈とお米を物々交換していたそうです。
もちろん、鱈は農村にとって貴重なたんぱく質。
しっかりと煮汁の味が染み込み、
グシュグシュと独特な食感から溢れる旨みは、
いつの時代になっても、本当のご馳走です。
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数々の伝承料理を目の前にしたお客さんの表情は色々。
懐かしいといった顔や、初めて触れた味に対する驚きが、
テーブルに並ぶ料理の力を物語っていました。
◆きのこの塩辛
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緑物の山菜が一段落した秋になればきのこの季節。
ナメコやさもだしなど、多種多彩なきのこが食卓をにぎわせます。
そんなきのこを南蛮や菊の花と共に、
だし汁や塩辛昆布と混ぜ合わせたのがこの一品。
トロリ、つるり、くにゅ。
色々な食感と南蛮の辛さもあって、
ごはんが恋しくなる一品です。
◆貝焼きみそ
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弘前を始めとした、津軽伝承料理の代表的な一品。
この日は煮干し出汁の効いた玉子味噌に、
ネギやホタテの貝柱、そして板麩が加えられてました。
◆栗ごはん
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そして、締めのごはんは栗ごはん。
一粒一粒丁寧に皮を剥き、炊き上がったごはんから立ち上る、
栗の香ばしい香りとお米の甘い香り。
会場に満ちた時、誰もが笑顔になっていました。
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これらの料理を更に彩ったのが、
岩間千栄子さんによる津軽三味線。
弾くではなく叩く。
心が奏でる津軽三味線の音色は、
お客さんの心のドアもノックしたに違いありません。
人によっては故郷の料理であり、
初めて出会った料理でもあるのがこの日の料理。
お客さんはきっと、
生きるための英知が宿った料理が持つ魅力に、
改めて心が揺さぶられたはずです。
輸送手段が近代化し、
食材に関しては日本全国の色々な場所で、
お目にかかる機会が増えた一方で、
食文化はやはり昔の手法や味付けで料理を作ることができる方がいないと、
お目にかかることができないもの。
だから、長きに渡って特定の地域で特定の料理が伝承され続けることは、
毎日のように奇跡が続くことだと思っています。
丁寧な仕事による料理ではなく、
色々なものが進化したことで、
最低限の仕事によって美味しさが生まれる機会が増えているゆえ、
生きる為の料理というものの必然性が、
少しずつ失われつつあるのですから。
そんなことを伝えるイベントなんだろうと思いました。
そして、自分もそんなイベントを、
メニューコーディネート等でお手伝いさせていただくことになりました。
ちょっと途中になっている、「津軽料理遺産」プロジェクトを動かすためにも、
他の地域で食文化を作り語り継がんとする、この方この方に対しても、
何より、今の自分を作ってくれた青森に対して、
恥ずかしくないことをしなければなりません。
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次回の開催は12月12日の月曜日、
舞台となるのは青森県三戸町。
粉食文化の地である三戸町の食文化には、
主食である粉をいかにして食べるかという
英知がぎっしり詰まっています。
ぜひ、青森の食文化に会いに来てください。
<けっぱれ東北!青森の料理と文化伝承しナイト・三戸町編>
開催日時:12月12日(月)18:30~     
会場:新橋「ボワヴェール」   
問い合わせ:03-5157-5800

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
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Posted by takapu