茨城県水戸市・水戸芸術館「水戸岡鋭治の鉄道デザイン展 駅弁から新幹線まで」
自分にとって、
近くて遠い県の一つだったのが茨城県。
納豆や偕楽園、あるいはスタミナ冷やしといった、
単語ベースの知識でしか地域を知らなかったのですが、
先日、茨城出身の方にご案内いただき、初めて訪れました。
愛宕山の山頂から見る太平洋の景色、
充実と興奮、そして感動の産直、
イバライガーの浸透度合いに、
なぜかよく見かけたピンクのコンビニ・ココストアと、セイコーマート。
美しき自然から不思議な小売り網まで、
1分1秒が驚きに満ちた新鮮な体験でした。
そんな茨城県に訪れた目的の一つが、
水戸中心街のシンボル・水戸芸術館。
象徴的な「塔」がそびえ立つ建物に入り、
お目当てだった展覧会の大きな看板とご対面。
「水戸岡鋭治の鉄道デザイン展」
JR九州を中心に公共交通のデザインを手がけ、
電車が持つ基本機能に、驚きのアイデアを組み合わせることで、
「乗りたい!走っている地に行きたい!!」
と思わせてくれる。
そんな魔法をかけてくれるのが、デザイナーの水戸岡鋭治さん。
これは、今までに手がけてきた鉄道関連のデザインを中心に、
魔法に五感で触れることができる展覧会です。
さっそく、入口の左側には、おお!と驚いてしまうイラスト。
和歌山電鐵・貴志川線を走る普通電車、
たま電車のシンボル・たま車掌と、
阿蘇駅を走る特急「あそぼーい!」のシンボル・あそくろえもんが、
一緒に九州新幹線を運転しているのですから。
ということで、興奮の余韻のまま、
先に進むことにしましょう。
複数のスペースに分かれているこの展覧会、
最初に出迎えてくれたのはリンゴが一つ描かれた暖簾と、
これまでに手がけられた車両や駅舎を中心とした、
色鮮やかな絵画展。
圧巻と言ってしまえば簡単なのですが、
鮮やかに九州を走り抜ける車両や、
細かな部分まで徹底的に描かれた車両の俯瞰図。
車両の模型も展示されており、この部屋だけでも心躍ります。
次のスペースは、JR九州を中心とした公共交通にまつわる、
色々なプロダクトの展示。
運転手さんの制服や、たま電車のグッズなどなど、
一つ一つの作品に近づいて手に取って、細部に触れることができます。
その先には、JR九州で走る新幹線や特急のシートの実物展示!
座ってみたかった車両のシートがすぐそこに。
開発の過程がNHK「プロフェッショナル」で放送された、
あそぼーい!の親子ペアシートもあります。
座り心地の佳さはもちろんのこと、シートの柄や素材、
テーブルの形やリクライニング、細部にまで本能に対する贅が尽くされています。
腰を下ろして目を閉じれば、まだ肉眼で見たことのない九州の風景を、
脳が全力でイメージする。そんな感じです。
4つめの部屋は、来年スタートする
JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」が描く夢。
小さく区切られた小部屋には、立ち茶室まで。
来年、現実のものになる世界に触れられるなんて、
本当に贅沢なものです。
その先には、なんとJR博多シティの屋上で走る、
ミニトレインつばめ電車の勇姿!しかも、乗れます。
ゆっくり走る電車に乗りながら、
今まで見て来た部屋を横切ると、
童心と大人心が繋がります。
降りれば、再び作品が描かれたパネルトンネル。
そこには、デザインされた駅弁の姿も。
JR東で販売されているいくつかの駅弁を、手がけさせてもらっている身として、
シンプルに心が欲するものを具現化すると、この形になるよなぁ・・・
と、ちょっと共感できたのがうれしくてたまりませんでした。
そして、その先には子供達とのプロジェクト紹介。
この展示会自体、子供達が公共デザインに
興味関心を持ってもらえることがコンセプト。
水戸岡さんの多岐に渡る活動と、今日触れて来た展示作品を振り返ると、
源泉は楽しく繋げることであり、それを目に見えるものや身体で感じるものでつなぐことが、
公共デザインなのかもしれない。公とは人と人との結びつきでできているから。
未熟な自分なりにそう感じました。
随所に置かれたスタンプを台紙に押せば、
チケット売り場でちょっとしたお楽しみも。
そんな展示会は明後日の日曜日まで。
茨城近辺の方には、絶対に足を運んでもらいたい展覧会です。