神保町・さぼうる 夜のお供はソーダ割りと3つのおつまみ

 

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高校を卒業してすぐに役所に就職した自分は、仕事を終えたら夜学に通うという4年間を過ごしていました。

机の上を片付けたら地下鉄に乗って、90分×2コマの講義を聞いたら約2時間かけて家に帰る。
月曜日から土曜日まで、パンパンに授業を入れたキャンパスライフは、口が裂けても華やかなんて言えるものじゃありませんでした。

当時の数少ない癒やしは、大学掲示板に「休講」の文字が見えた瞬間に始まる短い時間でした。
書店に行ったり共栄堂でラムカレーを食べたり。神保町界隈をブラブラと歩くことは、役所界隈の空間で過ごす昼間の時間と真逆すぎて、なんかキラキラしていました。

そんな時は、さぼうるにも足を運んだものです。

店の真ん中、半地下の狭い空間。どういう訳だか落ち着く壁沿いの隅っこにある小さなテーブル。
ここで軽く食事をしながら「いつか、壁に自分の名前を書こう…」なんて思っていたのですが、結局今日までその願いは叶っていません。

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卒業してから約15年が経ちますが、当時から夜のさぼうるで注文するものは変わらず、基本のドリンクはソーダ割り。

ビールなんか飲もうものなら、帰りの電車の中で目の裏側が痛くなるほど酒に弱く、しかも今ほど炭酸水が手に入りやすくなかった時代。20歳そこそこの自分が、唯一嗜めた嗜好品でした。

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そのお供に欠かせなかったのは唐揚げ。

ソースや大きさで着飾ることなく、まるで誰かの家に遊びに行ってごちそうになるようなルックス。とにかく熱々で、頬張れば必ず口の中の粘膜が剥けて、でもそれをソーダ割りで洗い流す。そんな遊びをするのが好きでした。

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そこにお腹と時間に余裕があればナポリタンを追加。

お昼に食べるナポリタンが午後へのエネルギーなら、これはお疲れ様のナポリタン。トマトソースがしっかり絡んで、玉ねぎのシャキシャキとした食感。
ピーマンとハムの鮮やかな色合いが減っていくと、同じぐらいの嬉しさがお腹に入ったはずなのに、妙に悲しくなったものです。

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あとはピザ。具はシンプルでチーズがたっぷり。

熱々の生地を持てば指先が限界に近づいて、口に運べばチーズと生地の間の熱気が一気に口の中に押し寄せる。
だから結局、またソーダ割りのお世話になってしまう。
酒をたしなむというのではなく、ここのこの空間でこの組み合わせと共に過ごすのが好きだったんだなぁ…と。

正直、大学の講義のことなんてほとんど覚えてなく、教室の椅子なんて二度と座りたくないぐらいですが、さぼうるの椅子にはいつだって座りたくなるものです。

ローカルフードデザイナー/伝承料理研究家
全国各地の伝承料理を中心とした、食材・食文化の魅力を伝えるコンテンツ制作や商品開発を通じて、人と地域の関係を深める食卓づくりをデザインしています。ウェブサイト「ホットサンドカフェ バウルー」「貝の王国 隠岐の島」や「百年食堂」も運営中。著作は「男と女のホットサンド」(フードユニット『やくみ』名義共著・グラフィック社)。詳しいプロフィールは下のリンクから。
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