熊本地震から1年、日本五大稲荷の一つ・高橋稲荷神社の参道に店を構える「田楽家」で食べた田楽とだご汁のこと。

 

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去年の8月に取材で訪れた熊本の地。中心地から車を走らせて向かったのは、日本五大稲荷神社の一つに数えられる「高橋稲荷神社」。一見、建物には被害が及んでないように見えますが、当時は本殿に向かう階段も大きな被害を受け、この先は立ち入り禁止の状態でした。

現在は本殿周辺への立ち入りが可能となりましたが、その先にある奥の宮に続く道は今も整備が続きます。

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当時進んでいた大鳥居の解体・補修工事も現在は完了し、大勢の参拝客を出迎えているそうです。

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この鳥居が建つ参道で参拝客に愛されていた料理が田楽。かつては10以上のお店が軒を連ねていたそうですが、現在は赤い暖簾と屋号を記した看板が目印の田楽家さんを残すのみとなっています。

創業は明治10年ごろ。初代が神社の門前に開いた小さな茶屋をルーツに、現在は五代目に暖簾が受け継がれています。「地震の影響で建物も壁が崩れてしまい、大広間は窓が開かない状態」だったこちらのお店。それでも地震から数週間後の5月1日に営業を再開。周りの方々やお客さんからも早期の再開が大歓迎されました。

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店名が物語るようにお店の看板料理は今も昔も田楽です。でも、「自分の代から始めた」という、熊本の郷土料理・だご汁の文字も気になるところ。となれば、両方注文するしかありません。

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鮮やかな赤のお盆に並ぶ、田楽を中心とした様々な料理。「竹串から割り箸で豆腐を抜いて、熱々を口に運ぶ」という田楽家の作法に従って、まずは一串いただきます。

昔から受け継がれる製法と調味料で生まれる甘味噌の香りとコク。咀嚼するごとに表面軽やかな豆腐と混ざり合い、素朴で力強いおいしさが満ち溢れてきます。また、驚きだったのが、この味噌とごはんとの相性の良さ。塩気のある味噌に馴染みがあるだけに、意外な組み合わせに顔がほころびます。

そして、主役を囲む干し筍の煮付けや手作りがんもどきなどの副菜。中でも特に目を奪われたのが、『お平(おひら)』と呼ばれるお吸い物。卵、ちくわ、かまぼこ、ほうれん草の組み合わせは「古くから、最高に健康にいいとされてきた具材の組み合わせで、代々受け継がれてきた」というもの。透んだお汁の中に色鮮やかに輝く姿に品格を感じます。

ちなみに、田楽は通年で味が変わらない印象がありますが、「店の敷地内にある山椒の木から木の芽が出てくる5月前後は、これを味噌に混ぜるので香りが立ちのぼります」とのこと。これからが美味しい時期です。

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そしてもう一つの主役・だご汁。三つ葉の香りに導かれておつゆを飲めば、牛蒡や人参、椎茸といった野菜の甘さと鶏肉の出汁を、醤油がまとめたその味に『おいしい!』の声が思わず出ます。

見た目に滑らかな団子を頬張れば、ムニッと心地よい弾力とつるんとした喉越しの醍醐味。シャキシャキとした具との組み合わせが、絶え間なく歯を喜ばせます。

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熊本地震発生から1年、熊本城をはじめとしたインフラ整備は少しずつ進んでいますが、それでも復興には遠い状態。この地に培われてきた田楽やだご汁の歴史を紡ぐ、田楽家さんのようなお店に訪れることもまた、復興支援の一つだと思うのです。

※当時の取材記事はこちらです。百年食堂−受け継がれてきた暖簾と味の物語 熊本県熊本市「田楽家」
http://100shoku.jp/diner/kumamoto-dengakuya

ローカルフードデザイナー/伝承料理研究家/復興庁「専門家派遣集中支援事業」登録専門家
地域食材・食文化をテーマにした商品開発や地域活性事業の企画・運営、取材、執筆、撮影、講演活動、地域メディア・ソーシャルメディア運営アドバイザー。人×食×地域の繋がりを強くする取組みをしています。詳しいプロフィールは下のリンクから。
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