【岩手県遠野市】予約必須の小さな名店『魚っこや』で食べる、交易拠点だからこその旨い魚料理

   2017/09/17

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たとえ自分自身で足を運んだことがないとしても、地名を耳にしただけで「いいところだよね」と思える場所。そんな町が全国に多々ある中、岩手の場合は遠野がその代表格のはず。

座敷わらしやカッパといった、遠野物語で記されてきた象徴が頭に思い浮かぶところですが、江戸時代には南部氏1万2千石の城下町として、そして内陸部と沿岸部を結ぶ奥州街道の中で、交易拠点として発展した町でもあります。

そんな地だからこそ、実は市内には海産物が美味しいお店が点在。スーパーの魚売場を覗けば、宮城で水揚げされたマグロのお刺身が輸入品のマグロよりも安く並ぶほどに、太平洋の地魚が生活に身近な存在となっています。

駅から歩いて約5分、市役所近くの路地裏に佇む小さなお店。『魚っこや』の屋号を掲げるとおり、ここは魚料理の専門店。お父さんが漁師をされている大槌から魚が届き、息子さんが腕を奮います。

そのクオリティの高さはお通しの二品が証明。天然のホヤ刺しには独特の風味がぎゅっと詰まり、イカの沖漬けを食べれば、実の弾力からあふれる海の香りとコク。これが本編なんじゃないかと思えるぐらいの小鉢です。

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まずは欠かせない刺身盛り。ヒラメにマグロ、ブリ、イカ、しめ鯖、サンマ。おまけに添えられた縁側が嬉しいところ。個々の魚が持つ脂だったり旨味歯ざわりだったりの、個性が全ての魚で驚くほどくっきり。これで二人前ですから、すごいものです…!

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そして、ここに来たら食べておきたいのが「しゅうり貝」。10センチほどの殻に包まれた色鮮やかな身。目の前に出されるとその迫力に驚きを隠せません。

いわゆるムール貝の近似種ですが、三陸沿岸の食文化を代表する『磯ラーメン』の出汁に欠かせない存在。絶妙な酒蒸し加減で、ふっくらした身から溢れ出す磯の香りと濃厚なエキス。

ムール貝の料理を注文して、身が出がらしになっていたなんてこともありますが、こちらは仕上がり加減を絶妙にコントロール。地の人が地の食材を扱うとこのクオリティになる。そんなことを改めて教えてくれます。

手が止まらず、無心に食べているとお皿の上にはたっぷりのエキスが。もったいないなぁ…と。そこで、ご主人に無理言ってある料理を作ってもらうことに。

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イカの天ぷらはカラッと軽やかな衣に包まれた身がフワッと柔らかく、やさしい旨みがじんわりと優しく広がります。弾力系のイメージがありますが、これは歯には優しいタイプです。

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こちらは、おまけで出してもらった穴子の頭。このお店では天ぷらや白焼きなどで楽しめる穴子。これをベースに煮詰めを作る時に煮込んだ頭。ほろっと身がほぐれる柔らかさと、上品で適度に脂を湛えた白身の味、隅々までおいしさを残さずいただきます。

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焼き魚は鯖で。パリパリの皮に覆われるのは、ふっくらした身とそこから溢れる豊富でスッキリした脂。みょうがの甘酢漬けで口をさっぱりさせながら。

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さぁ、土鍋が出てきました…!しゅうり貝の出汁で雑炊を作ってもらいました。

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お椀に盛って一口食べれば…あぁ、これはたまりません。濃厚な磯味を一粒残らずお米が吸って、フワッと柔らかなタマゴが優しい味わいを加えています。まるで飲むように食べ、鍋が空っぽになったタイミングで胃袋は満タン。

小さなお店なのですが、座敷席もカウンター席も満員御礼。ご主人と奥様のお二人で目の行き届く範囲で提供しているからこそ、一つ一つの料理に家庭の感じが残っています。

なんか、これぞ地魚料理なんだなぁ…と。奇をてらわず、ましてやインスタ映えなんて関係ない。実直な見た目で、この地で愛される魚の美味しさが満喫できます。

ローカルフードデザイナー/伝承料理研究家/復興庁「専門家派遣集中支援事業」登録専門家 地域食材・食文化をテーマにした商品開発や地域活性事業の企画・運営、取材、執筆、撮影、講演活動、地域メディア・ソーシャルメディア運営アドバイザー。人×食×地域の繋がりを強くする取組みをしています。プロフィールやお問い合わせは下のリンクから。
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